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Ⅱ.輝跡

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「輝跡」 (1996年)

 「窓岩夕景」から18年。私は故郷を離れ、妻と二人、東京に暮らす。父は精神病が性格の中に溶け込んで通常の生活ができなくなった母親との生活に疲れ、家を出て行った。東京に引き取った母親はすぐに倒れ、もう10年も精神病院に入院している。そして父はひとりさびしく定年退職を迎えようとしている。

 故郷へ帰る機会を失った私は、今度は父を引き取らなければならないだろう。望郷の念と失意の入り混じった感情を抱えながら、残されたわずかの時間を愛惜しむように写真機材を担いで足繁く北海道へ通う。      

 祝津の丘から日本海にレンズを向ける。ファインダーの中で、秋の柔らかな陽射しを受けて、二艇のヨットがすれ違う。突然、セイルを高々と上げた艇が、三枚の美しい帆を張った艇に向けて舵を切りはじめた。緩やかな弧を描く航跡。青い波間に出会う二艇の奇跡。いつの日か生まれてくるわが子の名には、この海の青さを込めたいと思う。

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